海外大会や強化合宿、交流遠征のシーズンが始まり、空港やホテル、駅、競技会場で過ごす時間が長くなる。こうした場所の無料USB充電口は電源だけでなく、データの通り道にもなる。このリスクは「ジュースジャッキング」と呼ばれる。
米FBIのデンバー支局は2023年4月、悪意のある人物が公共USBポートを使ってマルウェアや監視ソフトを端末に導入し得ると警告し、自分の充電器とケーブルを持参して電源コンセントを使うよう呼びかけた。これは特定の新規事案を受けたものではなく、一般的な注意喚起だった。
香港のHKCERT(香港コンピュータ緊急対応センター)は2020年2月に同種の警告を公表し、2024年7月24日に更新した。給電専用ケーブルまたはUSBデータブロッカー、自前のUSB充電アダプターの使用、端末に出る「信頼」の要求を拒否すること、自分のモバイルバッテリーかレンタル品を使うことを勧めている。
シンガポールでは、サイバーセキュリティ庁(CSA)とシンガポール警察が2023年4月の共同勧告で、ジュースジャッキングを悪意のあるWi-Fiやブルートゥース攻撃と並べて挙げ、公共の充電口ではUSBデータブロッカーを使い、自動ファイル転送を切るよう勧めている。
2025年のUSENIX Securityで発表された研究は、リスクをさらに一歩進めた。オーストリア・グラーツ工科大学のチームが示した「ChoiceJacking」は、ジュースジャッキング対策として使われてきた同意確認を回避する。8社の試験端末すべてで写真や文書、アプリのデータを取得でき、うち2社の端末ではロック中でもファイルを抜き出せた。1社を除き、Apple、Google、Samsung、Xiaomiを含む各社が通報を確認している。
中国国家安全部は2025年7月30日、シェア型モバイルバッテリーについても注意喚起を出した。機器にハードウェアを追加してデータ経路を作る手口や、「このデバイスを信頼しますか」「USBデバッグを許可しますか」といった表示で権限を与えさせる手口、スパイウェアやトロイの木馬、バックドアの混入が挙げられている。これは脅威の類型についての公式な警告であり、一般のシェア型バッテリーが広く侵害されているという意味ではない。
柔道のチームにとっての実践的な順序は、まず自分のモバイルバッテリー、次に自分の充電器とケーブルで電源コンセントを使うこと、見慣れないUSB-A充電口を避けられない場合にデータブロッカーを使うこと、そして予期しない「信頼」「データ転送」「USBデバッグ」の要求をすべて断ることだ。会場、宿泊先、空港でも同じである。
こうした警告は予防的なものだ。何日も移動を続ける柔道のチームでは、日程や証明書類、連絡先を同じ端末に入れておくことになる。自分の電源を持ち歩くことが、最も簡単な備えになる。
情報源
- HKCERT|公共の充電スポットでスマートフォンを充電する際のジュースジャッキングに注意(2020年2月公表、2024年7月24日更新)
- シンガポール・サイバーセキュリティ庁/シンガポール警察|悪意のある無線・有線接続からのモバイル端末保護に関する共同勧告(2023年4月18日)
- USENIX Security 2025|ChoiceJacking:ジュースジャッキング対策の回避(グラーツ工科大学)
- 中国国家安全部|シェア型モバイルバッテリーに関する注意喚起(2025年7月30日、司法部の法情報プラットフォーム転載)
- CBS News|FBI、公共のスマートフォン充電スタンドの利用を避けるよう呼びかけ(2023年4月11日)

