かつて世界柔道ツアーのスポットライトを浴びていた人物が、今はスイスの学校の廊下を歩いている。66kg級で世界選手権を2度制した丸山城志郎は、2025年2月に現役を終えた。現在は家族とともにスイスに暮らし、柔道を教育環境に取り入れたEcole Mont-Olivetで中心的な存在となっている。
彼の新しい役割は、かつての姿の縮小版ではない。表彰台を追いかける代わりに、指導、デモンストレーション、技術と柔道の価値観を伝えることが仕事になった。第1回Ecole Mont-Olivetローザンヌ・グランドスラムでは、その転身が最も大きな舞台で目に見える形となった。
公式開幕式で、丸山はクロアチアの共栄柔道家ペトラ・オレシュコビッチと共に、バリア対応版の投の形を演じた。脳性まひを持つオレシュコビッチは、共栄柔道運動で広く知られる存在だ。二人はエリート柔道、共栄柔道、聴覚障害者柔道を、同じ畳の上で一つのコミュニティとして示した。
この物語の主役はライバル関係ではない。丸山にとって大切なのは、柔道を次世代に伝えるという静かな技芸である。かつて相手を圧倒した世界王者は、今、次の世代が自分たちの畳の上の旅を始められるように、その力を注いでいる。

